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「iQバトル 20世紀」に見る20世紀のクイズ問題

  前世紀末、「20世紀」という100年を舞台にしたクイズ番組があった。タイトルは「iQバトル 20世紀」。同番組は1999年から2000年にかけてCSで放送され、多くの名勝負を生み出した。そして当初の予定通りグランドチャンピオンを決定し、来世紀、つまりは今世紀を待たずにその幕を下ろした。
  この番組内で出題されるクイズは、全て20世紀に関するクイズであった。この点に着目して、この番組において出題されるクイズを分析すれば、20世紀の中で最もクイズ出題のネタになった時代が分かるのではとの思考に至った。今回のレポートは、20世紀でクイズにしやすい時代はいつなのかを主題とした。


《実験手法》
  「iQバトル 20世紀」の予選は、インターネットを介した四択クイズであった。その問題の大部分は「19●●年〜」という出だしであった。これを利用して、過去に7回行われた予選の問題全1900問の出だしを分析する。これによって各年の問題が何問出題されたのかを一目瞭然とする。


《分析結果》
  まずは各年別。(縦は10の位、横は1の位。)
  00102030405060708090
0年−−1118101631273420 7
1年261821292330131912 6
2年 823181814241532 6 6
3年2615 823 726212011 3
4年202313151031282512 4
5年291411192626311614 1
6年171415202836271815 3
7年 6171715162723 916 1
8年171820233134331810 1
9年231621152733221610 1

  また、中には「19●●年代」という問題もあったので、これを補足。
00102030405060708090
 2 2 8 2 0 3 3 1 1 1

  上記の二つを合わせた年代別は次の通り。
00102030405060708090
174 171 170 189 198 301 243 208 127 34
  上記の通り、最も多い年代は1950年代、それに60年代、70年代と続く結果となった。なお、2000年からの出題は0、「19●●年〜」という出だしではなかった問題は85問という結果も付記しておく。


《検証》
  結果からは多くのことを読みとれるが、ここではなぜ1950年代が最も出題数の多い年代となったのかを検証する。この年代を各年で見ると、出題数が30問を越えた年が実に6つもある。100年のうちで、30問を越えた年は全部で11。そのうちの半数を占めた勘定となる。ではこの30問を越えた年において、複数の問題においてネタとなった出来事を記してみよう。

1950年

1951年 1954年 1956年 1958年 1959年


《考察》
  まず最初に、目立ったのが初物問題である。最初というものは、それがネガティブな内容であっても一般的には記念すべきものとして捉えられる。戦後の復興期というものは、追いつき追いこせの勢いで、敗戦国が多くのものを学び取ろうとし、自然と初物の発生が増加する時期でもある。それはまた日本に限らず、他の国でも第二次大戦の荒廃から立ち直ろうとする時期であったとも言える。
  しかし初物だからといって、何でもかんでもクイズ問題になるわけではない。となれば、時期の熟成について考察すると、大体50年くらい前が出題しやすい時期となるのであろうか。10年たった後に、1950年代よりも1960年代の問題が増えているのであれば、この仮定は正しいと言える。だが1990年代のクイズ番組において、1940年代のクイズが特に多かったかと思い返してみれば、1940年代は大戦の真っ最中で、各分野の文化よりも戦争ネタの方が多く、とてもではないが広範なクイズは作りづらい時期である。であるから、単純に「50年前」と括ってしまう考察は誤りであると言えるだろう。なお、iQバトルにおける1940年代も、軍事・政治ネタが特に集中していたことも付記しておきたい。
  では改めて、初物が多い時期がクイズ問題として集中するかと問われれば、それだけでは1950年代への問題集中を説明するのに、いささかパンチが弱い。それにiQバトルでは初物問題が特に多く出題されている傾向も見受けられる。これらの要素から初物と限定せず、文化そのものがネタとして見られると考察してはどうか。つまり「初物」として捉えるのではなく、「各文化の発展途上」として包括すれば、1950年代にクイズネタが集中したことを説明できるのではなかろうか。

「時間を軸にしたクイズ問題のネタは、
文化が発展しきった時期よりも、発展しつつある時期に集中する」

これを「舟太の法則」と名付けよう。(←馬鹿)もっとも、この法則が正しいのかどうかは、今はまだつぎはぎだらけで信憑性は低いと言わざるを得ないだろう。
  是非はどうあれ、このことが事前に分析できていれば、わずかなりともiQバトルで有利となり得たのでは無かろうか。しかし時が戻ることはありえず、クイズ番組が同じ形態で戻ってくることもまた然り。もしも約100年後、この番組と同じコンセプトで「21世紀」をテーマとしたクイズ番組が制作された時、この分析が生かされることを願いたい。
  なお、上記の結果から、他にも多くの事例を読みとることができるが、残念ながらその考察を行うための時間は足りなかった。これ以降は読み手の中にいる次なる研究者の手に委ねることとして、研究発表を終える。


《謝辞》
  このレポートを完成させるにあたり、大阪大学の西田康生さんの手によるデータを大変参考にさせていただきました。ありがとうございました。


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