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なぞなぞ「カバの兄弟ゲンカ」の正解を求めて


  2002年の6月頃からだろうか。ネット上で、こんななぞなぞが流行った。


「豚が離婚するお菓子はとんがりコーン。
ではカバの兄弟がケンカをしているお菓子は何?」



  「ブタ→とん、が→が、離婚→りコーン」と、なぞなぞの前フリが綺麗な流れになっているのに対し、本題である「カバの兄弟がケンカ」の部分については、様々な解釈がなされた。このことから、上述の問いは元々「豚が離婚するお菓子は何?」「答:とんがりコーン」という完成されたなぞなぞに、後付けで誰かがくっつけたのではないかと推測されている。
  なぞなぞの成り立ちはさておき、前フリの完成度の高さから、このなぞなぞにも“完成度の高い”“納得のいく”解答が用意されているものと思うのは当然のことであろう。ところが現状では、どうひいき目に見ても“完成度の高い”“納得のいく”解答は導き出されていない。このことから、このなぞなぞには誰もが「おぉなるほど」と頷く解答は用意されていないと推測するのが自然であろう。
  ところが、完成度の高い前フリに対し、色々な解釈が成り立つ完成度の低い本題という落差のためか、ネット上では「これが正解だ!」という、様々な説が提唱された。それと同時に、真の正解を知りたいがために、2ちゃんねるは言うに及ばず、そこら中の掲示板に質問をしまくる教えて君が後を絶たなかった。この結果、このなぞなぞがネット上で異常に広まることとなった。もちろん、これまで記述した通り、誰もが納得のいく完成度の高い説は、今のところ提唱されてはいない。
  今回の報告では、このなぞなぞに対する“有力な正解説”をまとめてみた。また提唱された説の対比として、“とても正解とは思えない説”も交えた。この中で、自分の納得のいく説を正解と考えてみてはいかがだろうか。


「ばかばかしい」説

  カバの兄弟→かばかば
  これがケンカをしているから文字がゴッチャ(逆さま)になり「ばかばか」
  これに「お菓子」の要素を加えると「ばかば菓子い」
  よってカバの兄弟ゲンカは「ばかばかしい」となる。

(舟太)なぞなぞ中にある要素のみでキチンと収拾が付けられており、また教訓めいた形の解答から、私の中では一番有力な説。ただ前フリが「とんがりコーン」と既存のお菓子なのに対し、本題が「ばかばかしい」ではおかしいと考える人が多いのも確かである。


「スイカバー」説

  カバは漢字で書くと「河馬」
  「河」の字のさんずいは「水」を源流とする偏である
  よって「河」→「水」+「可」
  カバがケンカをしたことにより文字がばらける
  「水」+「可」+「馬」→「スイ」+「カ」+「バー」
  よって「スイカバー」というお菓子が正解

(舟太)一見するとかなり完成されており、最も正解に近いと思われている説。しかしこの説では「兄弟」の要素が抜けている。「カバがケンカをしているお菓子」でも問題が成り立つのに、本題には「兄弟」が入っているのはなぜだろうか。ただ、もともと完成度が低いなぞなぞだけに、問題作者が意味もなく「兄弟」を文中に含めただけとも推測できる。


「かっぱえびせん」説

  カバの兄弟を「A」「B」とする
  兄弟がケンカをする→「戦う」
  「カバ」+「AB」+「戦」→「かっぱえびせん」
  よってお菓子の「かっぱえびせん」が正解

(舟太)「スイカバー」説の弱点を補い、かつ完成度が高い説。ただ完成度に比べ、賛同者が少ない辺り、説得力に欠けている感は否めない。やはりなぞなぞの本文が「カバ」ではなく、最初から「カッパ」であっても何ら問題がないのは痛い。むしろ「かっぱえびせん」が正解なら「カッパの兄弟が〜」という出題の方が自然である。また兄弟が唐突に「AB」となるのも、なぞなぞとしてはいただけない。


「蒲焼さん太郎」説

  1.
  兄弟ゲンカによって、兄が弟にヤキを入れる
  兄だから名前は「太郎」
  これらの要素に合うお菓子といえば「蒲焼さん太郎」
  よって「蒲焼さん太郎」が正解。

  2.
  兄弟ゲンカで、長男と次男が三男である「三太郎」にヤキを入れる
  この要素に合うお菓子といえば「蒲焼さん太郎」
  よって「蒲焼さん太郎」が正解。

(舟太)この説は「カバ」に関連するお菓子として「蒲焼さん太郎」を先に挙げ、後から理由を取って付けたような印象が強い。それでもこの説を信じる人がいるようで、ダークホース的なポジションにある説。


「カバヤジューシー」説

  「蒲焼さん太郎」説同様、兄弟ゲンカで三男に「ジュー」っとヤキを入れる
  三男だから「C」
  よってお菓子の「カバヤジューシー」が正解

(舟太)「蒲焼さん太郎」説同様、正解を先に決めつけて、無理矢理当てはめた印象が強い。


「どでかばー」説

  ケンカをしたことで弟が激怒する→「怒弟」
  「怒弟」+カバ→「どでかばー」
  よってお菓子の「どでかばー」

(舟太)「スイカバー」説の弱点である「兄弟」の要素を満たした説。流れの強引さで押し切られそうな説だが、先に記述した説と比較して、パンチの弱さは否めない。やはり「怒弟」では説得力が低いか。


「キットカット」説

  「かば」→「樺」
  カバがケンカをしてバラバラになる「樺」→「木」+「華」
  「木」+「華」→「キ」と「カ」と→キットカット
  よってお菓子の「キットカット」

(舟太)展開が「スイカバー」説と似ているが、使用した漢字が異なる説。なおキットカットのCMには「Have a Break」というキャッチコピーがあることから、「ケンカをやめよう」という意味合いも含まれているのでは、とも展開された。


「キシリトール」説

  キシリトールは樺(かば)の木から取れるから

(舟太)誰だよ、こんなクダラネェ説提唱したの。しかもどこがお菓子だよ。てめ〜は豚が離婚したお菓子を「トンカツ」とか脊髄反射で答えるタイプだろ。あ〜ん?


「かまぼこ」説

  河馬ボコ(かまぼこ)

(舟太)「キシリトール」以下。話にならない。


「バカ」説

  カバがケンカをして「バカ」
  「カ」は「菓」にかかる
  よって「バカ」

(舟太)ただ単に「またチェーンメールかよウゼェ」と思った人が、出題してきた人をあざける意味で「バカ」と言っているだけだと思われる。


「欠陥」説

  カバは血の汗を流すという俗説がある→「血汗」
  「血汗」→「欠陥」
  よってこの問題は「欠陥」問題である

(舟太)よってこの報告も終了


*まとめ*
  以上のように、明確な答えが用意されていない1つのなぞなぞについて、数多くの人が頭を悩ませ、数多くの説が提唱された。その中には目を見張る説もあるし、くだらないと一笑に付す説もある。しかしこれらの説を眺めていると、人間というのは色々な形で正解に辿り着こうと、試行錯誤する動物なのだということが改めて認識できる。どんな些末なことであっても、人間があれこれと思考することは、何と美しいことか。


追記
(2003/02/20)

  このレポートを公のものにしてから4ヶ月半が過ぎた。一時期よりは沈静化したものの、「カバの兄弟ゲンカ」問題は、今でもたびたび見かけることがある。大抵は上述した説が提示されるなどして収束しているが、私も知らなかった新説が一件見つかったので、これを追補する。また、「カバの兄弟ゲンカ」問題から派生したなぞなぞの中で、一つ、異常に広まっている問題があったので、これを取り上げる。


「カール」説

  「ケンカ」→「バトル」→「“ば”取る」
  「カバ」から“バ”を取る→「カ」
  「カ」だけがある→「カ」がある→かある→カール

(舟太)有力な説が出尽くした後に提唱されたせいか、奇をてらった感が強い。「ばかばかしい」説、「スイカバー」説を越える説を生み出すのはやはり難しい。


突然変異問題
「フグの兄弟がケンカをしたら?」について

  一時期爆発的に広まった「カバの兄弟ゲンカ」問題が収束に向かいつつある中、2002年の末頃から「フグの兄弟がケンカをしているお菓子は何?」という問題が広まり始めた。
  最初はただ単に「カバの兄弟ゲンカ」問題を揶揄して作られた問題かと推測したが、あることに気づいた。この2つの単語を漢字変換すると

カバ→河馬
フグ→河豚

となる。一文字目は同じ漢字で、二文字目は動物を表す漢字である。もともと「カバの兄弟ゲンカ」問題はチェーンメールの要素が強いネタである。だから問題が伝達される過程で「河馬の兄弟ゲンカ」と記されていた問題を、誰かが誤読して「河豚の兄弟ゲンカ」と漢字を誤って伝え、問題文が変わってしまったものと推測できる。つまり「フグの兄弟ゲンカ」問題は意図的に流布されたものではなく、河馬(カバ)が河豚(フグ)へと突然変異したものであると推定する。
  なお、なぞなぞ「フグの兄弟がケンカをしているお菓子は何?」に対する解答については、やはり二番煎じのせいか、まともなものはおろか、「キシリトール」説並みの解答すら提唱されていない。しかし「フグの兄弟ゲンカ」問題に対する解答として、「スイカバー」説を越える有力説が提唱される可能性は、ゼロではない。


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