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花と蛇杯EAST体験記

 この大会は1997年6月28日に、雪ヶ谷大塚にて行われた、KITANクラブが主催したオープン大会です。この大会の2週間前には、ルール・形式が全く同じ「花と蛇杯WEST」というオープン大会が関西でも行われており、1つの主催団体が東と西で開催した初めての大会ともなりました。また、この大会は嶺上杯に続くMOP企画第2回でもあります。
スタッフ
 新井浩
 豊田治
 丸山淳
 石塚領史

資料提供:丸山淳
 つい先週行われた「えんくり杯」で、ペーパークイズ直前に到着という出来事があったため、今回は用心して開始1時間前に最寄り駅に到着。しかし、1時間前ならば最寄り駅に怪しい人間が1人か2人いてもおかしくないはずなのだが、なぜかこの日は全く見あたらなかった。誰かと待ち合わせをしたわけでもなかったため、待っていてもしょうがないので、初めて来たところだったが地図を頼りに会場まで行ってみることにする。
 本当にこっちで良いのかと思いつつ歩を進めていると、コンビニが見えてきた。何か買っていこうかと中に入ると、本棚で立ち読みしている人の中に見たことのある顔が。その人がすぐに木村武司さんとわかり、話し掛けると、隣には萩原秀隆さんがおり、関西からわざわざ参加するとは、凄いやる気だと感じた。
 木村さん達と会場へ行く途中、だんだんと雨が激しくなってきた。私は天気予報を全然見ていなかったので知らなかったが、台風が接近しているそうで、今回の大会にも多少の影響を与えるのではと木村さんは話していた。
 会場には早くに着いたため、まだ場内にいたのは小倉紀雄さんだけだった。彼は長野大学クイズラバーズ(おや?どこかで聞いたサークル名)の所属で、クイズ番組氷河期となっている今では、「クイズ僻地」と言わざるを得ない長野にいながらも、最近関東の大会に積極的に参加し、大会の模様をビデオテープに撮っているほど熱心な人である。そういった熱心なタイプは大抵“社会常識”が欠けている人が多いのだが、小倉さんは非常に礼儀をわきまえており、常識ハズレの人にはぜひとも見習って欲しい人である。
 開始時間までは岡村悟史さんらと話をしていたが、参加者が一向に集まらない。会場内に余りにも人が少なかったため、開始時間となったときは時計が壊れているのかと思ったくらいだった。
 会場内をざっと見渡さずとも、指で1人1人数えられるほどで、参加者は何と40人。最近関東でオープン大会が連続であったためや、関東の各サークルはこの日にサークルナンバーワンを決める企画を行っていたり、気象条件や不慣れな会場の場所など、いろいろな要素は考えられるが、これだけ参加者が集まらなかったのは今もって謎である。しかし、参加人数が少なくとも、そう簡単に勝てそうもないメンバーがたくさんいた。


1R:50問筆記クイズ(40人全員通過)

 ペーパー1問目から「チンボラソ山」と来たもんだ。さすがは日本一の泡沫クイズ集団KITANクラブである。ちなみに、花と蛇杯WESTでは「エロマンガ島」が第1問目だったそうである。問題傾向としてはn択問題が普通のペーパーよりも多かったのだが、ペーパーを行っているときはそんな感じは受けず、どうやら知識を持っている人にはストレートに解くことができ、できない人でも何か書けば当たるという工夫がなされていたようである。
 私個人では、「色暦大奥秘話」や「スワジランド」といった正解したらカッコイイものを落としたのは残念だったし、つい最近作った「毛抜」や、明治6年まで言っているのに「明六社」を誤答したりと、今一歩不満な出来であったが、とりあえずは32点は取れたので良しとする。人数が少なかったことにも助けられたか、当日発表の成績は4位。大会終了後、実は5位の岩村貴成さんが、点数が1点少なかったということを聞き、自分が本当は5位だったことは後で知ることとなる。
 ペーパー1位を取ったのは東海澱粉クイズサークル「コーンスターチ」に所属する神野一成こと春日誠治。確か明治は今日、サークルナンバーワンを決める企画をやっているはずではなかったのでは?ということはさておき、ペーパー成績は33点。私はあと2点取っていれば、オープン系大会初の予選1位を取れただけに残念だった。(予選2位は都立オープンと一橋オープンにおいて2回ある)予選トップとなった春日には、記念品として「ベストビデオ」が贈られた。ちなみに、ペーパー2位の人のためにも記念品が用意されていたのだが、当日になって方針変更され、予選最下位の五条方昇君に「さぶ」が贈られた。
 参加人数が40人と少なく、2Rは全員通過となってしまったため、いきなり3Rのコースセレクトをすることに。私は何も考えずに一番最後の通過クイズを選択。


一口メモ


3R[1]:ブラックジャッククイズ(7人→4人)

 このラウンドには舛舘康隆さん、神野芳治、志村真幸といったオープン活躍組と、クイズの帝王・脇屋恵子さん、FNSで活躍した田島高広さん、そして矢崎英之さんがいる。実力的にはオープン活躍組が優位だが、このラウンドはルールがルールだけに、カードの引きの強さも必要である。実際、WESTでは予選1位を取った福本慎一郎君はこのラウンドで、正解数は一番多かったのに、運悪くカードを没収されて失格となってしまったのであるから。

1問目「昭和6年生まれで、「鬼のように稼いで、女性を見たら慈悲もなく、/」
脇屋「団鬼六」

1問目を取ったのは脇屋さん。しかも引いたカードは「A」で、ブラックジャックのルール通り、エースは1か11を選べるのでいきなり優位に立つ。
 その後しばらくは誤答とスルーで正解が出なかったが、6問目に「ダシール・ハメット」、7問目に「ライオンズクラブ」と2連取した舛舘さんが合計を15として勝ち抜け目前とする。さらに勢いに乗って8問目も解答権を取るがこれは誤答。だが2休明けで復帰した直後の11問目に「ジーン・セバーグ」を正解し、カードも味方して合計が20となり最初の4R進出者となった。
 舛舘さんが抜けた直後、神野と脇屋さんが順に誤答し、早押しに参加する人が少ない状態で志村が「ムガール帝国」「Vサイン」を2連取。カード合計も12としてチャンスとなるが、先程の舛舘さん同様に3連取を狙いに行ったところを誤答。
 今度は、自分が休みの間に志村に稼がれた神野が攻めに出る。それまでで8を持っていたが、17問目にまず「大江季雄」を正解して14とし、18問目の「ゴルディオス」で2連取とし、ここで7を引き、ブラックジャックで2人目の勝者となった。
 さらに次に出てきたのは田島さん。20問目の「アレルギー」、21問目の「バチスカーフ」と、見事な2連取を決めるが、ここでの合計はたったの7。それ以前にも1枚持っていたが、その札も2と低い数字で、3○で合計が9と、カード運が無い。
 問題数が残り10問を切ったことで、そろそろ判定時の得点を気にしなければならなくなってきたが、カード合計が12と微妙な位置にいた志村が25問目に「ドーガン」から「ホットドッグ」を正解。ここでドボンとなれば勝ち抜けは絶望的だが、引いたカードは6で、合計を18として3人目の勝者となった。
 終盤戦は思うように点が伸びず、あと1問の時点で脇屋さんが11点でトップ。最後の問題だけに、脇屋さんは誤答しても勝てるという、非常にクイズをしづらい状況となるが、そうしたことは気にせず押しに行き、「景徳鎮」を正解して合計をさらに16として、判定で勝ち抜けた。


一口メモ


3R[2]:空席待ち対決クイズ(7人→4人)

 このラウンドはペーパー上位でもある慶応の木下良太と吉屋大樹が最有力。それに曽根喜則さんが続く。そして参加者はあと4人いるのだが、誰が強いのか予想できなかった。
 ここは短期決戦のラウンドだけに、数少ない得点チャンスをものにしなければ勝つことはできない。

1問目「ニューヨークの彫刻家ジェス・クーンと結婚式をした際に、それに立ち会ったシルヌイ牧師に言われたため、その日を最後に引退をしたというイタリアのポルノ女優で、/」
木下「チッチョリーナ」

吉屋との一騎打ちは木下が勝った。勢いに乗って2連取するかと思ったが、入れ替わった曽根さんが2問目の「西村京太郎」を正解。そして同様のケースで曽根さんは木村俊孝さんに正解され、意外と2連取が難しいことを教えられる。その曽根さんから正解を挙げた木村さんは、4問目は相手の誤答に助けられ、5問目はスルーになる直前に解答権を取り「是はうまい」を正解して、4番グリッドという中位置が有利に働いたか、トップでこのラウンドを抜ける。
 7問目、2度目の対決となる木下対吉屋。今度は吉屋が正解してチャンスを得る。8問目は曽根さんと吉屋という、両者リーチの対決。ここでは地力に勝る吉屋が「ピンクパンサー」を正解して、順当に2抜けを果たした。
 9、10問目は下位グループに回ったが、数少ないチャンスをスルーと誤答で生かせず、再び上位グループにチャンスを渡してしまう。11問目、これで3巡目となり、2度目の対決となる木下対曽根さん。両者リーチの対決はここでも曽根さんは踏み台にされてしまい、「沖鳥島」を正解した木下が3抜けを決める。
 残る席はあと一つとなり、誰が抜けるかということが焦点となったが、この後しばらくはスルーと誤答の嵐でラウンド自体が完全に間延び。やや見どころに欠ける勝負となってしまったのは残念であった。そんなマンネリ化していた状況を打破したのはやはり曽根さんだった。もうかなりの回数早押し席に着いていたが、17問目にしてようやく2回目の正解を出し、会場から「さすが、汚れクイズプレイヤー!!」とヤジられながらも最後の席に着いた。


一口メモ


3R[3]:タイムレース(6人→4人)

 このラウンドには上田洋一さん、光山聡さんというベテラン組、東北学院大学の西村陽さん、長野大学の小倉紀雄さんという遠距離大学プレイヤー組、松尾浩、日高大介という慶応大学の若手組と、3つのグループにくっきり分かれた。
 スピード勝負のタイムレースは、比較的経験がモノをいう形式である。そうなると、日高、松尾はここぞというときに失敗をしそうな予感があった。逆に、場数を踏んでいる上田さんや光山さんは有利ではと考えていた。
 前半の3分間がスタートする。序盤に飛び出したのは西村さん。あれよあれよという間に2位以下との差を開いていき、通過人数上位4人を考えれば、最初の1分間で勝ち抜けるに十分な点を稼いでいた。中盤から出てきたのは上田さんで、西村さんを上回る勢いで正解を重ね、さらに終盤に入ってもその力を衰えさせないままペースを持たせ、そのまま前半戦は終了する。
 前半を終了した時点で、トップはやはり上田さんで+6。2番手は西村さんで+5。3番手の光山さんでも+1であるから、すでに上位2人の勝利は決まったと言って良かった。上位2人以外に、前半で目立っていたのは小倉さんと日高。だが、目立つということは必ずしも良い方向ばかりには働かず、小倉さんは2○2×でトータル0、日高に至っては2○3×で−1と、誤答が足を引っ張った成績。松尾は1○1×で0であり、得点が倍になるラスト1分を考えると、差はほとんど無い下位グループ4人が、残り2つの席を争う状態だった。
 後半がスタートして、まず上田さんと西村さんが確実に点を上げ、さらに勝利を確実なものとする。それに続いたのは小倉さんで、逆に光山さんは誤答をしてしまいピンチに陥り、二人の立場が完全に逆転した。光山さんの誤答でチャンスと見たか、日高は勝負に出るが1○1×で足踏み。問題は淡々と進み、すでに小倉さんの勝利は確定的となり、ほとんど棚からぼたもちで松尾が4番手に入りつつあった。だが31問目、最後の最後で焦りが出たか、松尾が無理に問題を取りに行き、痛恨の誤答。この誤答と同時にタイムレースは終了となった。
 トップで通過したのは+7の西村さん。挑戦者6人の中でただ一人誤答が0という着実さであった。
 2位は+6の上田さん。29問目に「ライムライト」を誤答していなければトップで抜けられたのだが、この辺りが上田さんらしいというか。
 3位に入ったのは+2で小倉さん。遠隔地にいても、実力は着実にアップしているようである。
 そして、4位は−1と、若干低レベルな争いとなってしまったが、光山さんと日高の2人が並んだ。松尾の得点は−2で、最後の問題を誤答していなければ0で勝てたというのに。

32問目「国際テニス連盟では1982年から採用されている、試合が長時間になるの/」
光山「タイブレーク」

サドンデスの問題は偶然にも「時間」に関わるもの。光山さんが早い段階で解答権を取り、ひねりにひねって解答を導き出し、日高を下してラスト抜けを決めた。やはりというか、若手2人はここぞという勝負どころでの戦い方がまだまだ未熟だという感じであった。
 それと、タイムレース中は通常、問題を全文読んだりしないので、最後にまとめて発表するのだが、読み手の新井浩さんが行った問題&正解発表は圧巻であった。


3R[4]:潜水艦クイズ(7人→4人)

 ここは沼屋暁夫、岡村悟史さん、萩原秀隆さんといったあたりが有力候補。他の4人は横一線という感じであった。ただ、このラウンドは運が頼りの形式であるので、運に見放されればあっという間に敗退してしまうラウンドでもあった。
 さて、用意されるカードなのだが、1〜20までの数字カードでは味気ない。用意されたのは「久保田早紀」「B.B.クイーンズ」といった“一発屋”が書かれたカードで、ここの形式ともつながるウィットに富んだジョークに、観客は笑いと拍手をスタッフに送った。
 ちなみに、20枚のうち自分は2枚持っているので、最初に正解すると18枚のうちの1枚を選択するわけである。ここで選択したカードを、誰かが持っている確率は18分の12なので、正解しても3回に1回は無駄打ちとなる。
 1問目は永井智子ことサティがいきなり誤答。自分が持っていた「アラジン」をオープンし、苦境に立たされる。上記で述べた通り、目印がなければ他の人のカードを当てる確率は3分の2だが、カードが開いているとなればこれほど格好の的は無い。2問目を正解した沼屋は当然「アラジン」を指定し、サティのカードは早くも1枚となった。

3問目「昭和56年には王貞治に次いで2人目の台湾国民栄誉賞を受賞した女性歌手で、昭和46年には「雨の御堂筋」で日本/」
岡村「欧陽非非」

 さすが岡村さん、懐メロには圧倒的な強さを発揮。岡村さんが「竜哲也」を指定したことで、遠方の同志社から来ていた関輝当さんのカードが残り1枚となる。続く4問目は、サティが「伊藤野枝」を、普通のオープンでも遜色無い押しで正解を挙げる。そしてここで指定した「狩人」は何と沼屋が持っており、見事な復讐を果たした。
 さらに5問目は大川修司さんが正解し、指定した「松村和子」で沼屋が不幸にも2問連続で的中されてしまい、いきなり失格となった。まっ、日頃の行いが悪いからこういうことになったのだろう。
 6問目は萩原さんが誤答をしてしまい「あみん」をオープン。次に萩原さん以外の人が正解すると、萩原さんのカードが1枚減るのは確実だった。そしてその正解をしたのは何とサティ。意外なと言っては失礼かも知れないがここでサティは沼屋に続き、萩原さんをも窮地に追い込んだことになった。
 さらにサティは9問目を正解し、指定した「久保田早紀」は見事関さんに的中。関さんが2人目の敗者となった。
 10問目、一番敗者に近い萩原さんが正解をするが、指定した「小林明子」は、このラウンド初の空砲。どこまでもツイてない。さらに11問目は「アフリカ人初のノーベル文学賞」と完全にキーワードが出ていたのに、「ショインカ」を思い出せずに誤答。残り1枚の「B.B.クイーンズ」をオープンし、4人対1人のきつい勝負を強いられることになった。そして13問目、岡村さんが正解をし、萩原さんに引導を渡した。
 このラウンドには特に順位付けがなかったので、正解数をチェックしてみると、何と3○1×のサティがトップ。美味しいところを押さえた岡村さんが2○。1○でも沼屋を失格にする殊勲をあげた大川さん。そして何と0○0×で、勝負には全く関わらなかった平田了君が勝ち抜け。この辺りは「運も実力のうち」であろう。沼屋は実力が9あっても、運が−10だったようだし。


一口メモ


3R[5]:上座争奪クイズ(6人→4人)

 トップの席に座ったのは、予選1位の春日誠治。2番目は予選2位の宮澤大輔君、3番目は予選6位の大村哲也さんと、オープンの強豪が続く。そして4位の席に着いている山本信一さんまでが、このラウンドのボーダーラインであった。

1問目「現在は参議院議員である母親の貞子の第二秘書を務めている、かつて「東京少年」というバンドのヴォーカルとして活動した人物で、レズビアンである/」
大村「笹野みちる」

 先制したのは大村さん。序盤戦は接戦の展開が予想されたが、早くも勝負の転機が訪れる。

2問目「兄のヤコブ、弟のヨハン、そしてヨハンの子ダニエルの3人がいずれも数学・物理学の分野で功績を残し、/」
春日「ベルヌーイ」
3問目「初めは「杏の実」という題名が付けられていたが、作者の敬愛する太宰治の勧めで、現在のタイトルになったという、五輪選手の阪本の/」
春日「オリンポスの果実」
4問目「会員制ヘルスクラブ「マホロバクラブ」の社長も務め、また神奈川県大和市の田園都市厚生病院の院長でもある、大ベストセラー/」
春日「春山茂雄」

何と、宮澤君や大村さんといった強豪を押しのけ、春日があっという間の三連取を決めてわずか4問でトップ抜けを果たした。
 中盤戦は宮澤君、大村さん、山本さんの3人が激しく入れ替わる好勝負を続けるも、大村さんが7問目でまず1点目を入れ、若干入れ替わりの治まった13問目で2点目、そしてそのままトップが入れ替わることなく16問目に3点目を入れ、宮澤君と山本さんに点を与えないまま見事な2位抜けをした。
 大村さんが抜けたことによって、席次を上げることなくトップの席に着いたのは宮澤君。直後の17問目を正解して1点を入れる。その後は山本さんと宮澤君が何度か順位を入れ替え、終了が間近となった24問目にして山本さんが待望の1点を入れ、残る勝者枠2つがほぼ決定的となった。
 残り問題数からほぼ勝利は決定しているのだが、参加者は問題数が分からないので真剣そのもの。宮澤君が27問目に2点目、29問目に3点目を入れ、山本さんとの勝負に蹴りを付けて3人目で勝ち抜けた。
 残る席は1つとなったが、最後の問題はスルー。得点を持っていた山本さんが最後の席に着いた。
 あれだけ激しい順位争いをしたにも関わらず、勝ち抜けた4人は誰一人として誤答をしておらず、大変な好勝負を見せてもらえた。それにしても、このラウンドは上位4人だけでしか戦っていないようであった。


一口メモ


3R[6]:通過クイズ(7人→4人)

 ようやく私の出番。私を除いて、このラウンドの有力どころはまず予選5位の岩村貴成さんと、鷹羽寛さん、木村武司さん、そして科学王の西田司に、最近活躍著しい中雅史さん。また、このラウンドには鷹羽夫人も参加していた。

1問目「警察で容疑を否認し続けたが、好きだった「山男の歌」を歌って聞かせると涙を流して全面自供した人物で、昭和51年1月22日に死刑となった、昭和46年に白のマツダのロータリークーペに乗り、/」
岩村「大久保清」

まず先制したのは岩村さん。続く2問目も解答権を得て、早くも通過席かとドキッとさせられたが誤答。3問目は西田、4問目は鷹羽さん、5問目は中さんが正解して、早くも4人が通過席にリーチをかけ、私は内心穏やかでは無くなっていた。
 そして6問目に「陪審制度」を正解した岩村さんが最初の通過クイズ挑戦。完全に浮き足立っていた私には、7問目は訳が分からないうちに問題が読まれ、訳が分からないうちに岩村さんが解答権を取り、訳が分からないうちに誤答して岩村さんが普通の席に戻ってきていたような感覚であった。
 そんな状況で8問目、頭の中では正解の「金栗四三」を考えているのに、なぜか「ラザロ」と答えて誤答。ただ、私にとって幸運だったのは、誤答がマイナスポイントではなく、休みであったことだった。2休の間に、とりあえず気分を落ち着けることができた。
 そして落ち着けた直後の11問目、「フランソワーズ・モレシャン」を正解した岩村さんが、早くも2度目の通過席に立ってしまい、流れをどうにかしなければという局面に立たされた。ここで流れを変えたのは西田だった。「海潮音」を正解して岩村さんを阻止し、それと同時に通過クイズ挑戦。

13問目「1852年に1号店が開店。その20年後に改装された際、そのクリスタルホールの設計をエッフェルが担当したという/」
西田「ボン・マルシェ」

阻止する暇を与えさせないまま、西田がトップ抜け。正直、このラウンドでの西田の正解には目を見張るものがあり、もはや西田は科学だけのプレイヤーではなくなったという印象を受けていた。逆に言えば、科学という強力な武器を持つ強豪になったと言えた。もっとも、強豪が増えることは、私にとっては嬉しく、歓迎すべきことである。
 西田が抜けた直後の14問目は岩村さんが誤答。波を支配していたプレイヤーが2休となったことでチャンスと見たが、これを生かしたのは鷹羽さんだった。15問目に「アリアドネ」を正解し、岩村さんが休みの間に通過クイズ挑戦。

16問目「40世紀のイース帝国の男女が乗ったタイムヨットが事故を起こし、196×年の西ドイツに墜落し、そこにいた日本人の男性とドイツ人の女性を連れ去るという発端から始まる、昭和32年から34年まで雑誌「奇譚クラブ」に連載された沼正三の小説は何?」

「奇譚クラブ」で、あれでは無かろうか?という直感が湧いたもののすぐには動けず。問題が読み終わった直後に押し合いになったが、押し勝ったのは鷹羽さんだった。

鷹羽「家畜人ヤプー」

この段階で早くも2人が抜けたことは痛いとその時は感じた。ちなみに鷹羽さんが抜けた後、「奥さん、あの人、「家畜人」なんて答えてますよ」と、スタッフは鷹羽夫人に変なことを吹き込んでいた。
 残る席があと2つの上、あと一つには岩村さんがまず間違いなく入るだろうと考え、見通しはかなり暗くなっていた。それに、このペースで木村さんや中さんを抑えて勝ち抜けることができるかと、自分に自信が持てなくなっていた。そんなマイナス思考では解答権など取れるはずもなく、17問目は木村さんに、18問目は中さんに押し負ける。だが、この押し負けのおかげで状況は好転。両方共誤答で、解答者が一時的に三人まで減ったのである。この得点チャンスを生かせなければ、勝つ見込みは無かろうと、確実に点を拾っていくことに努めることにする。

19問目「日比谷公会堂を含めた東京市政会館などを匿名で寄付したという、現在の富士銀行の創設者である実業家で、大正10年9月28日に大磯の別邸/」
舟太「安田善次郎」
20問目「1668年にシャンパーニュ州の寺院の酒庫係として従事していたベネディクト派の盲人の僧侶で、1682年にシャンパンをコルク栓/」
舟太「ドン・ペリニヨン」

19問目に初正解をし、さらに勢いに乗って20問目も連取。やっと初の通過クイズ挑戦にこぎつけた。
 21問目、何を答えて良いのか分からないうちに中さんが「ジャスコ」をあっさり正解して阻止。さらに通過クイズ挑戦となって立場が一転。この段階で中さんに抜けられてしまえば、残る1つの席は岩村さんが間違いなく取るだろうから、是が非でも阻止したかった。が、その意気込みは見事に空回りし、見当違いの誤答で2休。さらに23問目は鷹羽夫人が初めて解答権を取り、「坂上(さかがみ)みき」と答えた瞬間に正解の音が鳴ったので「よかった〜」と胸をなで下ろすが、「坂上(さかじょう)」が正しいそうで、次の瞬間には誤答の音が鳴らされ、いろいろと判定でもめた末、結局誤答となって、中さんに圧倒的有利な状況となった。祈るような気分で24問目を聞いていたが、全く分からないうちに岩村さんが解答権を取って「ガルバーニ」を正解して中さんを阻止。とりあえずは命拾いをする。あとは、自分自身がどうにかしなければならなかった。
 正解数においての岩村さん優位は変わらないので、当面の敵は中さんとなる。27問目に「銭形平次」を正解し、先行したのは中さん。すぐにでも追いつきたかった私は28問目を取りに行くが、ここでも木村さんに押し負ける。だが木村さんは完全に不調でここでも誤答。さすがにこれだけ不調だと心配にもなったが、同情をしている場合ではなかった。
 29問目、遂に流れを変える問題がやって来た。前フリではさっぱり分からなかったが、「ドイツの産婦人科医グラッフェンベルク」で即座に反応し、「Gスポット」をガッツポーズを取りながら正解。「さすがKITANだ!!」と俄然調子に乗り、30問目の「権藤正利」も勢いに乗って連取して2度目の通過クイズ挑戦。
 だが人生そんなに上手く行かないもので、問題がさっぱり分からず、岩村さんに阻止され、さらに通過クイズに立たれる。が、

32問目「ロシア語で「放蕩者」/」
舟太「ラスプーチン!!」

自分でも驚いた速攻押しで岩村さんを阻止。つい15問前までの自分はどこへやら、この段階でもう負ける気は無く、「絶対に勝てる」という意気込みが強かった。
 35問目は岩村さん、36問目は木村さんが誤答をしたことで解答者が少なくなっていたこともあり、37問目は「辻真先」まで読ませて「迷犬ルパン」を正解し、3度目の通過クイズ挑戦。

38問目「1927年9月14日に、運転していた赤いブガッティの車軸にスカーフの縁飾りが巻き込まれて/」

問題文にはまだ読まれていないのに、「こんな死に方をした人は一人しかいない!!」と勢いを借りて決めてかかり、

舟太「イサドラ・ダンカン!」

と正解。勢いというものは恐いもので、私が3人目の通過者となった。本当に、流れや勢いというものがクイズにどれほど大切かということが身に染みて分かった。
 残った2問は結局正解者が出ずにそのままの状態で終了。前半からの圧倒的なリードで、岩村さんが最後の4R進出者となった。

<通過クイズの攻防>
 7問目 岩村1回目 「ペクチン」      自滅
12問目 岩村2回目 「海潮音」       西田阻止・通過席
13問目 西田1回目 「ボン・マルシェ」   勝ち抜け
16問目 鷹羽1回目 「家畜人ヤプー」    勝ち抜け
21問目 舟太1回目 「ジャスコ」      中 阻止・通過席
24問目 中 1回目 「ガルバーニ」     岩村阻止
31問目 舟太2回目 「新人類」       岩村阻止・通過席
32問目 岩村3回目 「ラスプーチン」    舟太阻止
38問目 舟太3回目 「イサドラ・ダンカン」 勝ち抜け


一口メモ


4R[1]:ギミア風ボード(12人→6人)

 4Rは2つのコースに分かれているが、両方とも全く同じルールで、出題数も同じボードクイズ。では何が違うのか?となるが、違うのは問題傾向なのである。タイトルを見ても分からない人もいるだろうから一応説明。
 「ギミア風」は、TBSで行われた史上最強のクイズ王のような、正統派知識系のボードクイズが出題される。一方「FNS風」は、フジテレビで行われたFNS1億2000万人のクイズ王決定戦のような、ある種独特なタイプのボードクイズが出題される。
 私はこっちの「ギミア風」を選択していたのだが、正統派だけに、強い人が偏ることは予想していた。が、よもやここまで極端に偏るとは予想だにしていなかった。予選1位の春日、2位の宮澤君、3位の舛舘さん、4位の私、5位の岩村さん、6位の大村さんと、実に予選上位6人全員がこっちのコースを選択していた。また、吉屋、西田、志村といった慶応勢や、岡村さん、西村さんもこちらにおり、勝つには厳しいメンバーが揃った。
 1問目は1枚の絵が見せられ、この絵の題名を答えさせる問題。正解は「キオス島の虐殺」で、クイズでよく聞いている絵が、こんな絵だったとは知らなかったが、何人か正解者がおり、まずいなぁという出だし。
 2問目は「三島由紀夫が市ヶ谷駐屯地に乱入していたときに持っていた愛刀」で、正解の「関の孫六」が読まれると、誰からともなく、「三島由紀夫は「アタック25」に負けたショックで市ヶ谷に乱入したんだぁ〜」という言葉が発せられ、会場の笑いを取る。
 3問目は「イエス・キリストの誕生を恐れて、ベツレヘムの幼子を皆殺しにした王」で、これは新約聖書にも載っており、また、サロメがヨハネの首を所望した王の同じ名前なので、問題を聞き終わった後にゆとりを持って「ヘロデ」を解答し、どうにかまず1点。
 5問目は「「ドン・キホーテ」で、ドン・キホーテが憧れた田舎娘」で、バリバリのクイズネタだけに「ドルシネア・デル・トボーソ」を楽々解答。正解者は隣にいた舛舘さん以外全員がフルネームの解答で、舛舘さんは私に向かって「何でみんな、このドルシネアをフルネームで書くの?」と聞いてきた。しかし、こればっかりは「なんとなく」としか答えられなかった。序盤に2点取れたことで気を良くしたが、上位6人しか勝ち抜けられないことを考えると、2点だけでは、とてもではないが足りないことは分かっていた。
 7問目「公募された2代目のアメリカ海軍長官となり、マディソン大統領の国務長官を務めた人物」を答えさせる問題。さっぱり分からなかったので、ボードを上げずに無解答。司会がボードを順に読み上げている間、ぼーっとスタッフを見ていたが、何だか顔が若干ほころんでいた。「何がおかしいんだろう?」と疑問に思っていたが、その理由はすぐに分かった。正解は何と「ロバート・“スミス”」で、カンで「スミス」と書いた岡村さんがこの問題を単独正解。観客は岡村さんに惜しみない拍手を与えた。
 7問目は若干笑いの要素が入ってしまったが、中盤は正に正統派という問題が続き、どこかで聞いたことはあるが知らないor思い出せないために足踏み状態。その間にも必ず追加点を挙げる人がおり、未だ2点で留まっている私はピンチに陥りつつあった。
 その危機感が悪い方向へ働き、10問目の「ステビア」は頭が働かず、11問目の「菊池大麓」は一橋オープン決勝に出ていた問題だったにも関わらず、思い出せずに誤答。もちろんその間にも正解者は出ているので、もはや自分が取り残されているのはわかっていた。
 そして決定的だったのは12問目。「ビートルズの母体となった、シルバービートルズの前身」を答えさせる問題。以前に卍の企画で早押しで出され、その時は難なく正解を出したのに、なぜか思い出せない。頭を抱え「何で思い出せないんだぁ〜」と藁にもすがる状態で、シンキングタイムが無くなる間、ボードにペンを走らせることはできなかった。結局この「クオリーメン」は正解者無し。勝利の女神に見放されているのではという感じがしてならなかった。
 13問目「スーパーボウルの第1回、第2回優勝チームはグリーンベイ・パッカーズ、では第3回優勝チームは?」という問題。「これは作った!」と内心ホッとし、まだチャンスは残っていることに感謝しつつ、「ニューヨーク・ジェッツ」を正解。これでやっと3点目。また、この時点で両サイドの舛舘さんと岩村さんは共に2点だったので、恐らく私よりも内心穏やかではなかっただろう。それとも、こんなに色々とあれこれ考えるのは私だけだろうか。
 その後、私は追加点を取れなかったが、最後の15問目に「ツヴォルキン」を時間ギリギリで舛舘さんが思いだして正解し、私と同じ3点で並んだ。「おお、さすが」と思いながらも、一方で、「もしかしたら今の舛舘さんの正解で、私が7位に転落したのでは....」と、かなり性格が悪くなっていた。
 成績発表。トップは、“ダントツ”と表現したい4点で春日。それに続く3点は何と7人もおり、ペーパー成績が明暗を分けることになった。とりあえず、ペーパー上位の私はホッとし、宮澤君、舛舘さんに次ぐ4番目で準決勝進出を決める。そしてあとの2人は、あの「スミス」の正解が見事な勝利打点となった岡村さん、成長著しい西田が、予選上位の利を生かし勝ち抜けた。逆に予選成績が悪かったばっかりに苦汁を飲む羽目になったのは西村さんと志村。このラウンドでボーダーに入った7人は私を含め、単純な知識量を見るペーパーの順位が、こうしたところで重要な意味を持ってくることを再認させられた出来事だった。


一口メモ


4R[2]:FNS風ボード(12人→6人)

 こちらの有力どころは、まず神野、鷹羽さん、木下のペーパー上位陣3人。そして席次を見て驚いたのは、サティが4番目で、上田さん(5番)や光山さん(6番)よりも予選順位が上だということだった。下位陣では、脇屋さん、山本さんというグランドスラムの2人、それに小倉さんと曽根さんが続いていた。
 1問目は、こちらは音楽の問題。「マンボNo.5」が流れ、この曲の作曲者を問う問題。正解者は多数出ると思っていたが、「ペレス・プラード」を正解したのは木下と上田さんのみ。
 2問目は「ロッテから発売されている腸内バランスチョコレート」の名前。FNS色の強い問題で、参加者は一同に苦笑い。その中でただ一人、“汚れクイズプレイヤー”こと曽根さんが自信を持って「スッキリ快腸」なる解答。確かに当たってるっぽいので期待がかかったが、何と正解は「スッキリ快調」で、ひらがなで書けば良かったのにという誤答となってしまった。この誤答が後で響かなければ良いのだが。
 3問目は「イザナギ・イザナミの二神が天の浮橋の上から国土を矛でかき回したときに、その矛先から滴り落ちた潮が凝固してできた島」。この問題は、正統派でも通じる難問では無かろうか?と見ていたが、この「おのごろ」を、木下はともかくとして、サティまでも正解していたのには驚いた。神野や鷹羽さんらがわからなかった問題を正解するとは、(私個人の中で)サティが侮れない存在となった。
 5問が終わった時点で、トップを走るのは3点の木下。そして2位は2点でサティ。同点で3位に上田さんがつけ、ギミア風の時のボーダーを考えれば、木下はすでに勝ち抜けに達しているようであった。ただ気になるのは、神野がこの時点で0点と、完全に遅れをとっていることだった。
 6問目「華原朋美の前の芸名は遠峯ありさですが、その前の芸名は」。バリバリのFNS系問題。何人かが惜しい解答をしていたものの、「三浦彩香」を正解したのは、やっと初日が出たペーパー最上位の神野と、ペーパー最下位という状況的に厳しい木村さんという両極であった。
 7問目「世界で2番目の試験管ベビー、ドゥルガー・アガルワルが生まれた国」。ギミア風なら名前を答えさせるのだろうが、やっぱりFNS風である。知っている人はいなさそうで、名前のイメージからどうにか答えを引き出すしかないようだったが、「インド」を正解したのは神野、鷹羽さん、上田さんの3人。
 8問目「オリコン史上初めてデビュー曲初登場1位となった曲」。客席の方で私と岡村さんは、正解の「スニーカーぶるーす」を書いていたが、参加者は苦戦。この問題は上田さんが単独正解となり、これで4点目として木下を抜いてトップに立ち、勝ち抜けをほぼ確定的にした。
 9問目「「峠の釜めし」で知られる横川駅は信越本線にありますが、JRには他に同じ名前の横川駅がもう一つあります。それがあるのは何本線?」。カンで書けば当たりそうだが、そう簡単に当たらないのがクイズというもの。この問題で曽根さんが「山陽本線」を単独正解しようやく2点目。鉄道好きな曽根さんはこれを知っていたそうで、こうなると先程の「スッキリ快調」が悔やまれる。
 中盤戦はなかなか正解が出ず、脇屋さんと鷹羽さんが1回ずつ単独正解をしたのみ。13問目はサービス問題で、ペーパー上位10人のうち、木下を除く9人が正解。13問が終了した時点で、トップは依然として上田さんで5点。次に4点で鷹羽さんが続き、3点で神野、木下、サティ、曽根さんが並び、ここまでが成績上位6人。そして2点でこれを追うのは光山さん、脇屋さん、小倉さんで、勝ち抜けはここまでが有力そうであった。
 14問目は「「石の来歴」で芥川賞を受賞した作家」で、「奥泉光」を正解したのはペーパー上位3人と山本さん。山本さんは1〜12問目まで正解が出ず苦しかったが、ここに来ての2連取で最後の問題に望みをかけることになった。
 15問目は「日本プロ野球史上初の代打逆転満塁サヨナラホームランを打たれた中日の投手」。最後までFNS風のが続き、正解の「杉下茂」を正解したのは神野、山本さん、そして曽根さんであった。山本さんはこれで3点とボーダーラインには入ったが、ペーパー下位であった曽根さんに4点目を取られて逃げ切られ、3点のラインに残っていたサティがペーパー上位であったため、終盤に3連取しながらも、残念ながら及ばず。
 このラウンドをトップで抜けたのは神野。最初の5問が終わった段階で0点だったときは危ないのではと思わせたが、終わって見れば堂々のトップ通過であった。神野と5点で並んだもののペーパー順位により、2位は鷹羽さんで、3位は上田さんというベテランが揃った。4位は4点で木下。同点で5位は曽根さんで、「スッキリ快調」の惜しい誤答があったことで、最後まで勝てるかどうかは分からなかったが、「杉下茂」を正解して自分の力で勝利を手にした。そして6位には大健闘のサティが入った。


準決勝:対決早押しボードクイズ

挑戦者
予選 1位 春日誠治
予選 2位 宮澤大輔
予選 3位 舛舘康隆
予選 4位 鈴木舟太
予選 7位 神野芳治
予選 8位 鷹羽寛
予選 9位 木下良太
予選12位 岡村悟史
予選13位 西田司
予選19位 永井智子
予選20位 上田洋一
予選32位 曽根喜則
 いよいよ準決勝、一対一の対決早押しボードである。私の指名順位は4番目。もちろんそれまでに上位3人のうち誰かが私を指名すれば指名権は無くなるが、好んでペーパー上位を指名する奇特な人はいくらなんでもいないだろう。そうなると、3人が一体誰を指名するか予想しづらかったが、私が一番対戦したかったのは岡村さんだった。その理由は、つい3ヶ月前の3月に行われたハッスルカップで、準決勝であと1問という時点で岡村さんと同点であったが、ペーパー上位が私であったため、このまま両者に点が入らなければ私が決勝に行けるのであった。が、最後の問題は岡村さんが正解して逆転負け。関西のオープンでは初の決勝進出を逃したのであった。「復讐」という気は全然無いし、むしろあの時は岡村さんの方が勢いがあったので、決勝へ行くにふさわしかったのは間違いなく岡村さんだったことはわかっていた。そういうわけで、ここで岡村さんを指名するのは、自分がこの3ヶ月で岡村さんに太刀打ちできるようになったかという課題のようなものだった。岡村さんを越えていれば自分が決勝へ行けるし、岡村さんが強ければ、それは自分の力がまだまだだったということで諦められる。ただ一つ問題だったのは、岡村さんはペーパー下位なので、先にペーパー上位3人に指名される可能性が比較的高いことであった。指名されてしまったらしょうがないので、残った人の中でペーパー最下位を選ぶつもりであった。
 最初の指名権を持っていた春日は、上田さんを指名。この対戦、やはり「早押しボード」という形式においては、上田さんには悪いが春日が圧倒的に有利であろう。
 2番目の宮澤君は、曽根さんを指名。曽根さんは妙なことを知っており、早押しボードの単独正解を狙えるタイプだが、正攻法で来る宮澤君が間違いなく有利である。
 3番目の舛舘さんは、頭の中で色々と葛藤した末、サティを指名。さすがにサティも準決勝であれだけの活躍をしたとはいえ、舛舘さんが相手では厳しいだろう。
 そして4番目、ようやく私に指名権が回ってきた。当然岡村さんを指名。岡村さんは自分が指名されるとは思っていなかったようで、一瞬驚いた顔をしたのが印象的であった。
 5番目は神野。この段階まで来ると選択の余地はほとんど無いので、同じ慶応同士の勝負を避け、鷹羽さんを指名。
 そして最後に残った木下は、自動的に西田との対戦が決定。
準決勝対戦カード
予選 1位 春日誠治 − 予選20位 上田洋一
予選 2位 宮澤大輔 − 予選32位 曽根喜則
予選 3位 舛舘康隆 − 予選19位 永井智子
予選 4位 鈴木舟太 − 予選12位 岡村悟史
予選 7位 神野芳治 − 予選 8位 鷹羽寛
予選 9位 木下良太 − 予選13位 西田司
 対戦カードも決まり、全員が所定の席に着いたことで、準決勝の早押しボードがいよいよ始まる段となった。私が対岡村さん用に考えた作戦は、早押しを捨て、ボードのみに集中することだった。対戦が2人だけだったら積極的に行くべきだが、ここの早押しボードは12人も参加している。中にはヒートアップする対戦が少なくとも2つは出てくるだろうから、指の遅い私が解答権を取れるチャンスはせいぜい1、2回で、下手をすれば1回も取れないだろう。それならいっそのこと、最初からボードのみに集中して、点を確実に拾っていく方が堅実である。4Rのボードで思い出せない問題がいくつかあったことが気にはなるが、早押しボードの問題は文が通常よりも長いので、連想できる単語が多いので別物と考え、いい方向へと持っていくことにした。それじゃぁ、岡村さんがガンガン早押し正解をしてきたらどうするのかとなるが、それは岡村さんの方が上だったということで、素直に自分が弱かったということで諦める。

1問目「自ら胃ガンであることにひっかけて「これでイガン/」

 1問目の解答権を取ったのは神野。問題を推測すれば、「「これでイガン免職や」が最後の言葉となった」と続くだろうから、お笑い系の人であることは特定できたが、それが分かったところでどうにもならない。神野が自信を持って「桂春団治」と解答すると正解の音が鳴り、私を含め他の11人はボードを下げた。これによっていきなり神野が4点を獲得し、鷹羽さんに大打撃を与えた。これを見て、「岡村さんに単独正解をされたら、その時点でもう負けだな」と、ある種の覚悟もした。
 2問目は「微粒子の不規則」から「ブラウン運動」、3問目はカンで「市川崑」を共に導き出し、岡村さんは連想できずに両方とも不正解とし、この段階で2対0と若干リードする。

4問目「横浜市にあった日本最初の公衆便所の維持管理を請け負い、溜まった糞尿を近くの農家に売っていたという実業家で、最初は石炭商人であったが、1883年に現在の日本セメントを創/」

 解答権を取ったのは岡村さんだった。確か「セメント王」と呼ばれた人だったことまでは思い出せたが、肝心の答えとなる名前が思い出せない。クイズネタとしてはそこそこ知られる人なので単独正解は免れたが、岡村さんが「浅野総一郎」を正解したため、2対3と一問で逆転。こっちがボードで3問取る前に早押しを取られたことで、少しまずい気がしてきた。しかし、岡村さんと押し合いをして勝てるとは思わなかったので、とにかく確実にボディブローを浴びせていけば、間違いなく岡村さんに焦りが生じるという効果を期待してもいた。
 すぐさま5問目の「フラウンホーファー線」で同点とし、8問目の「魔法瓶」という科学問題で一方的に得点を重ね、4対3と再逆転。もっとも、6、7、9、10問目の知識がしっかりしていれば正解できた問題をことごとく落としていたので、今一歩の詰めが甘く、なかなか点差を広げられないことにこちらが焦りそうになっていた。
 11問目、「スナッチ」という聞き慣れた言葉が出てきたので初めて押しにいったが、当然押し負け。「ウェイトリフティング」はやっぱり全員正解。これで残り4問で1点差。
 12問目、エピソードを前フリに「メタンやしっぽをつかむ」の時点で神野が解答権を取る。化学者で「しっぽ」と来ればもうあの人しかいないだろうと「ケクレ」を正解し、5対3と2点差に広げる。
 結果的に勝負の分かれ目となった13問目。

13問目「乗馬の際にミキサー車と接触し、その怪我で引退したという、「サンディエゴ・ユニオン」誌のスポーツ記者ネルソン・フィッシャーズが戦艦ミズーリの愛称ビッグ・モーにちなんで/」

この時点で、何のスポーツの選手かは特定できなかった。だがなぜか「ビッグ・モー」→「リトル・モー」という連想が即座に働き、女性初のテニス・グランドスラマーである「モーリン・コノリー」を正解。西田の単独正解を阻止する形ともなったが、他の対戦がどう動いているかに関しては余裕がなかった。ともあれ、これで6対3とし、残り2問で早押し正解一問分の差をつけた。
 そして突然の終わりを告げた14問目。

14問目「1916年にオークランド・プリザービン社など4つの食品加工会社の合併で設立したカリフォルニア・パッキング社を前身とするアメリカの食品会社で、1967年にスペイン語の「山から」という意味の/」

解答権を取ったのは岡村さんだった。あと1問残ってはいるが、ここで最後の賭けに出たようである。だが、賭けではなく正解を知っていたとしたら非常にまずい。とにかく「山」で連想してみたが、「オレオ」ぐらいしか思いつかない。しかも、「オレオ」では「山“から”」という意味にはならない。だが他に答えは思いつかないので、何も書かないよりかはマシなのでとりあえず「オレオ」を書いてボードを上げる。一方、岡村さんが挙げた答えは「ナビスコ」。半分は「違うのでは?」と思いながら、もう半分では「もしかして正解なのでは?」と迷っていたので、早く答えを知りたかった。問題文の続きは「世界最大の果物、野菜類の缶詰メーカーは何?」で、全文聞いても答えは分からなかったが、ナビスコはそういうメーカーではないので、若干肩の荷がおり、正解の「デル・モンテ」が告げられたことにより、岡村さんは−2。これにより得点は6対1となり、最後の問題を待たずに決勝進出を決めた。15問目は「ジュスト・ジャンキン監督、シルビア/」で問題が止まったが、連想で「シルビア・クリステル」と続くことを察知し、最後まで手を抜かず「エマニエル夫人」を正解し、結果としては6点差の大差で岡村さんに勝利した。

<最終成績>
○ 春日誠治 9 −  1 上田洋一 ×
○ 宮澤大輔 0 − −1 曽根喜則 ×
○ 舛舘康隆 5 −  0 永井智子 ×
○ 鈴木舟太 7 −  1 岡村悟史 ×
○ 神野芳治 9 −  4 鷹羽寛  ×
× 木下良太 4 −  9 西田司  ○
 準決勝を戦っている間は、問題に集中していたため他の対戦がどう動いていたのかはよく分からないため、結果だけで対戦を振り返ることに。
 第1試合は春日の圧勝。しかし上田さんを相手にここまで一方的な勝負をしていたとは、本当に驚いた。
 第2試合は、別に両者がヘボかったわけではなく、両者とも同じ問題を正解してばかりだったので結果的に得点が伸びなかったのである。この接戦を決定付けたのは、曽根さんの早押しボードの誤答であった。
 第3試合は舛舘さんのワンサイドゲーム。快進撃を続けていたサティも、さすがに舛舘さん相手では太刀打ちができなかったようである。
 第5試合は両者ともにヒートアップしていたが、神野が鷹羽さんを上回り勝利。
 そして準決勝の全試合の中で、唯一指名された側が勝利した第6試合。慶応の実力者同士の対戦であったが、西田が先輩の木下を下して勝利。


一口メモ


決勝PART1:サバイバルボードクイズ

挑戦者
春日誠治(明治大学3年)
予選 1位、3R上座1位、4Rギミア風1位、準決勝9対1上田洋一
第1回MOP企画の嶺上杯で優勝。この大会も圧倒的な強さで決勝まで勝ち上がり、優勝候補の筆頭に挙げられ、MOP企画2連勝目前。
宮澤大輔(駒沢大学4年)
予選 2位、3R上座3位、4Rギミア風2位、準決勝0対−1曽根喜則
駒沢大学の大黒柱。オープンにおいては孤軍奮闘というケースが多いが、それだけ抜きんでた実力を持っている。
舛舘康隆(白夜書房)
予選 3位、3RBJ1位、4Rギミア風3位、準決勝5対0永井智子
2○2×が行われない大会では常に上位に進出。マンオブ予選1位、そして3位の実力者。社会人になっても衰えはない。
鈴木舟太(工学院大学大学院1年)
予選 4位、3R通過3位、4Rギミア風4位、準決勝7対1岡村悟史
嶺上杯準優勝、都立オープン優勝。早押しは遅いが、無駄に長い経験と、そこそこ持ってる知識で勝負。
神野芳治(慶応大学3年)
予選 7位、3RBJ2位、4RFNS風1位、準決勝9対4鷹羽寛
このMOPの発起人。オープンではいつもあと一歩の所で優勝を逃しているが、実力は十二分に持っている。
西田司(慶応大学3年)
予選13位、3R通過1位、4Rギミア風5位、準決勝9対4木下良太
“慶応の科学王”はもはや過去。実力はすでにトップレベルの域に達し、あとはオープンでの活躍である。
 予選上位4名、慶応勢2名が決勝に残った。いずれもオープン大会予選通過の常連だけに、誰が勝ってもおかしくなかった。さてこのサバイバル、形式と問題傾向的に難問は出無さそうなので、私にも一応はチャンスがあると信じていた。が、この5人を相手にボードクイズを勝つのは至難の業でもあった。
 1問目は絵の問題。「この山の名前は何?」という設問と共に、一枚の山の絵が見せられた。絵の構図などは違っていたが、これは間違いなく第1回K−1の予選問題で見た絵だった。「確か作者はこの山を好んで描いたんだよな?とすれば、複数枚あったとして不思議はないから、多少違っていたとしてもある程度似ているからあの山に間違いない。」と結論を下す。そして書いた答えは「サント・ビクトアール山」。画家セザンヌが好んで題材とした山だった。そして決勝に進出した6人全員が、この「サント・ビクトアール山」を正解。やはりここまで勝ち残った人達だけに、簡単には落ちそうになかった。
 2問目は「大リーグのオールスターゲームを計画し、オールスターゲームのMVPのカップに名を残す人物」。クイズ問題としてはよく聞く名前であったが、残念ながら覚えていなかった。正解の「アーチ・ウォード」を正解したのは宮澤君、舛舘さん、神野の3人。誤答した春日、私、西田は4点に。
 3問目は「カロチンの異性体である、トマトの果実にある赤みを出す成分」。答えは全く知らなかったので、「パパイヤにはパパイン、ナスにはナスニンという冗談みたいな名前の成分があるのだから、もしかしたら....」と馬鹿げたことを考え、「トマチン」と解答。他のみんなは真剣にやってるのに、何をやっているのだか。まぁ、ある程度の笑いは取れたからよかったけれど。さて、正解の方は「リコピン」で、これは舛舘さんが見事単独正解。舛舘さんが無傷で残り、宮澤君、神野が4点、残る3人は3点に。
 4問目は「11年連続リーディングサイヤーになり、その産駒が歴代1位の勝ち鞍を挙げている名種牡馬」。この問題もまた、全くと言っていいほど分からなかった。大体、私は競馬は全く分からない。それでも、みすみす3問連続減点されたくはなかったので、ラガーがリバティの例会で前に話していた馬を適当に書く。だがこの適当に書いた答えであった「ノーザンテースト」がなんと正解。心の中で「ナイスカン!」と叫びつつも、顔は喜んでいた。この問題は他に春日、宮澤君と計3人が正解。この時点で宮澤君、舛舘さんが4点、春日、私、神野が3点、そして西田が3問連続誤答で早くも2点と厳しい状態に。
 5問目は「太陽系の惑星・恒星間の平均距離を表す法則」。久しぶりに点を取らせる、ではなく減点をさせないための問題。「去年の一橋オープンでも出題されてたし、こりゃ全員正解だろ」と思いつつ「チチウス・ボーデの法則」を解答。これは当然正解だったが、何とここまで圧倒的な強さを誇っていた春日がこの問題を単独誤答。この誤答ははた目から見ても痛すぎたようだった。これにより、失格に一番近いのは西田、春日の2点、とりあえず私、神野が3点で境界線におり、宮澤君、舛舘さんは若干安全圏の4点。
 6問目は「オーストラリアの都市で、南オーストラリア州の州都」。フリに使われた西オーストラリア州の州都パースは知っていたが、南は知らなかった。「シドニーはニューサウスウェールズだから違うし....」などと色々考えていると、シンキングタイムがほとんど無くなっていたため、焦って「キャンベラ」と書いてしまう。冷静だったならばキャンベラは首都だから州には属していないということがすぐに分かったはずだというのに。結局この「アデレード」は、宮澤君、舛舘さん、神野、西田の4人が正解。これで春日があと1点となって失格にリーチ。そして私と西田が2点でボーダーライン上に。
 7問目は「最後の作品が「奥様は顔が二つ」という名女優」。フリがない実にシンプルな問題。これは知っていなければ手が出せず、宮澤君が「グレタ・ガルボ」を単独正解。これによって、春日が0点となって最初の失格者となった。準決勝まで常にトップ抜けを続けていた春日が、よもやPART1で失格するとは誰が予想していただろうか。しかし他人の心配よりも自分の心配をするべきである。これでとうとう私も西田と並ぶあと1点で失格リーチ。2点には神野、3点には舛舘さん、そしてここまで6○1×と驚異的な正解率の宮澤君は、この段階で早くもPART2進出を決めていた。
 8問目は「シャリアピンステーキを考案した帝国ホテルの料理長」。これは大学時代に何度か聞きながらも、一度も答えたことはなかったので、スッと答えが頭の中から導き出されたときは不思議な感じであった。この「筒井福夫」は舛舘さん、私、西田が正解。舛舘さんが2人目のPART2進出を決め、一方では私、神野、西田の3人が失格リーチで並んだ。
 9問目は「「野生のエルザ」の作者」。この大事な局面で、なぜか答えが思い出せない。あと一歩だというのに....この問題を神野と西田が落とすとは思えなかったので、失格を覚悟する。しかし、「ジョイ・アダムソン」を正解したのは舛舘さんと西田の2人だけで命拾い。とりあえずは西田が3人目のPART2進出者となった。これで私は0点となったが、同時に神野も0点となったため、最低4人はPART2に進めるというルールにより、サドンデスを戦うことになった。

10問目「阪神タイガースの応援歌「六甲おろし」。作詞者は佐藤惣之助、では作曲者は誰?」

 問題を聞いた瞬間、「これは作った! しかも、「六甲おろし」だけでなく、「闘魂こめて」の作曲者でもあるから、勘違いはないはず。」と自信を持って「古関裕而」を解答。ボードを上げてから一瞬間をおいて、岡村さんや沼屋がいる観客席側から「おお!」という歓声が上がる。神野は「三木露風」と、なぜか詩人を解答していた。自分の勝ち抜けを信じ、解答が読まれるのを待つ。正解として「古関裕而」が読まれたことによって、私が最後のPART2進出者となった。
 それにしてもこのラウンドで、私は「アデレード」とか「ジョイ・アダムソン」といった正解すべき問題を誤答し、「ノーザンテースト」や「筒井福夫」といった普段だったら誤答している問題を正解するという、勝利の女神は私を勝たせたいのか負けさせたいのか、一体どっちなのかよく分からない戦いをしていた。まぁ、最後は勝ったのだから、とりあえずは良しとしよう。
 PART2に進出したのは、宮澤君、舛舘さん、私、西田の4人。宮澤君と舛舘さんは実力を出し切って、それぞれ2点、3点を保持してPART2進出。早い段階で得点下位になり苦しい戦いをしていた西田は1点、そしてサドンデスまで行った私は0点からのスタートとなる。


決勝PART2:10P先取早押しクイズ

挑戦者
予選 2位 宮澤大輔 (あと 8○)
予選 3位 舛舘康隆 (あと 7○)
予選 4位 鈴木舟太 (あと10○)
予選13位 西田司  (あと 9○)

1問目「本名は池田和子。昭和47年大阪にあった「吉野ミュージックホール劇場」で、局部を意識的に露出するいわゆる特出しを行い、公然猥褻罪で逮捕されたという往年のストリッパーで、乳房を蝋燭/」
舟太「一条さゆり」

 早押しの出だしはやっぱりKITAN系。五大対抗戦でも出題していたため、ストリッパーで反応することができた。それにしても、この人が一ヶ月後(8月3日)に死去してしまうとは。
 2問目はスルー、3問目は宮澤君が正解。4問目に「第1回大宅壮一ノンフィクション賞の受賞者」を答えさせる問題で、「尾川正二」を答えるつもりが「小川正明」と、なぜか300勝投手を答えてしまう。おまけに休みの間、確実に1点取れる「美徳のよろめき」が出題され、馬鹿なことをしたもんだと、まだ始まったばかりだというのに後悔する。また、この休みの間に宮澤君が4点目を挙げ、舛舘さんを抜いてトップに立つ。

8問目「昭和59年4月13日に首吊り自殺により41歳で亡くなった漫画家で、代表作に「プレイボー/」
舟太「ちばあきお」

 この問題は、最近「消えた漫画家」を読んでいて、その影響で首吊り自殺をした漫画家はちばあきおくらいしかいないという考えが頭の中を占めていたために早い段階で取ることができた。これによって得点は、席次順に4、3、2、1点と左上がり状態に。

10問目「ガレノスやアヴィケンナを激しく非難し、講義していたバーゼル大学から追放されたスイスの医学者で、本名をセオ/」
西田「パラケルスス」

 ここまで一度も解答権を取っていなかった西田が初の正解。動きがなかった西田の存在を忘れつつあったのだが、科学の問題は西田と取り合いになる可能性が高いなということにようやく気付く。それにしても、スイスの医学者はパラケルススしかいないのだろうか。

11問目「本名は広太郎。その名前は史記の一節からその名を付けたという、1923年にアサヒグラフを創刊/」
西田「杉村楚人冠」
12問目「昭和35年4月15日、香川京子主演で放送され日本初のカラーテレビドラマとなった、木下順二がスペインの作家ペトロ・アラルコン/」
西田「赤い陣羽織」
13問目「日本では大正13年土井晩翠の翻訳で初めて出版された、スペインを出発し、ヨーロッパ各地を経てイタリアに到着するまでの全4巻からなる、イギリスの詩人ジョージ・バイロンの出世作である/」
西田「チャイルド・ハロルドの遍歴」

 ここで西田がパラケルススを含め、怒濤の4連取。最下位の位置から一気に駆け上がって宮澤君を抜いて5点としトップに立つ。文系問題もしっかり押さえるようになったなぁ、と感心している場合ではなかったので、快進撃を止めるために私は次の問題を取りに行ったが、無駄な誤答をしただけだった。そして私の3休の間に、舛舘さんが2○、西田が1○をそれぞれ追加。しかも西田の正解は、

16問目「昭和9年4月5日、デビスカップ遠征の移動中、箱根/」
西田「佐藤次郎」

と、手が付けられない速攻。このまま西田が突っ走るのではという気がしてきた。
 休みから戻った直後の18問目、「白蛇伝」を正解して私は3点目を追加。

20問目「1925年にベル研究所が開発した音の出る映画記録システム「ムービートーン」の権利を獲得したポーランド生まれの兄弟で、試作/」
舛舘「ワーナー兄弟」

舛舘さんが6点目で、西田とトップタイで並ぶ。続く21問目は宮澤君が正解して5点目を入れ、遅れだしてきたことに焦った私はまたも誤答で足踏み。

23問目「1828年にシーボルトからカール・ペーター・ツェンベリーの著書「日本植物誌」を譲り受け、この本に基づき、日本に初めてリンネの植物分類体系を紹介/」
西田「伊藤圭介」

 西田がこれで7点目を入れ、優勝まであと3点とする。だが今度は先程の勢いは続かず、スルー2問のあとで舛舘さん、私、西田の順に誤答して29問目は宮澤さんのゴールデンハンマー状態。ここで「モトローラー」を難なく正解して6点目を入れ、

30問目「映画「チャンピオンズ」の題材ともなり、日本からは昭和41年にフジノオーが初めて/」
宮澤「グランド・ナショナル」

「グランド・ナショナル」は知っていたが、今まで聞いたことの無い側面から出題され、それを速攻で正解する宮澤君に、初めて脅威を感じた。これで宮澤君が西田と並ぶ7点。早押しに入ってからは思うように正解できない舛舘さんと、すでに4点差離されている私に逆転は難しい状況から、優勝争いは2人に絞られた。

32問目「本名は一(はじめ)。「桟敷の女」「十六の女」「対鏡」などの作品がある日本画家で、昭和25年に日展の主要グループ日月会を主宰した、女優朝丘雪路の実父/」
宮澤「伊東深水」

 ここでリードしたのは宮澤君。これで8点目とし、優勝まであと2つ。駒澤大学初のタイトル獲得を目前にした。33問目はその優勝を阻止せんと舛舘さんが解答権を取りに行くが誤答。

34問目「富士山のレーダー観測所に記念のレリーフがある人物で、新田次郎の「芙蓉の人」のモデルに/」
舟太「野中至」

 私もまた勝負を諦めずにこれで4点目。ここでこの時に司会をしていた石塚君が、「さぁ、鈴木さんにもエンジンがかかってきました」と言ってくれたが、さっきからエンジンをかけてはエンストを起こしていたので、今度もそうなりそうな気がしていた。そして今度は永久にエンジンが止まったままとなってしまった。(要するに私の出番はここまで)

35問目「弟の柴五郎は陸軍大臣だった人物で、明治25年に憲政本党で総選挙に立候補して当選し、衆議院議員としても活躍した、明治18年から帰国してから書いた政治小説「佳人/」
西田「東海散士」

 「佳人之奇遇」を全部聞かせる前に西田が解答権を取り正解。これで宮澤君に並ぶ8点。36問目はスルーで、37問目は戻ってきた直後の舛舘さんが誤答。

38問目「昭和28年に文化勲章を受章した日本の地質学者で、東北大学の地質学古生物学教室を創設するなど日本の化石層序学の先駆的業績を残したことや、糸魚/」
西田「矢部長克」

 先にリーチをかけたのは西田。今度もまた「糸魚川静岡構造線」を全て聞かせる前に解答権を取る見事な正解。この時点で勢いは完全に西田が上である。

39問目「イタリアのラツィオ州にあるローマの東南東約55kmにある町で、1303年にフランス王フィリップ4世の法律顧問ギョーム・ド・ノガレの率いる軍勢によって、時の教皇ボニファティウス8世が捕らえ/」
宮澤「アナーニ」

 西田とは相反する形で、確実に問題を捕らえる宮澤君が追っかけリーチ。こうなってくるとどちらが優勝を手にするのか、予想することはできなかった。

40問目「1908年にケンブリッジ大学初の遺伝学教授を務めた人物で、メンデルの理論に傾倒し、メンデルの論文を英訳するなど、その普及に務める一方、ニワトリのとさか/」

解答権を取ったのは西田だった。すぐ隣で私は見ていたが、別段変わった調子はなく、いつもと同じような顔と口調で答えた。

西田「ベートソン」

この正解で10点に到達し、花と蛇杯EASTの優勝者が西田司に決定した。

 決勝戦PART2が始まった段階で、西田は9点取れなければ優勝できなかったのだが、早押しの正解は目を見張るものがあった。今まで私は科学だけで西田を評価していたが、この大会での西田の活躍ぶりに、すでに私を越え、トップレベルの実力を持つことがわかった。またこの大会に優勝したことにより、名と実を一気に手にしたような印象だった。
 準優勝は宮澤君。駒澤大学のプレイヤーでは唯一人のオープン大会常連という印象しかなかったが、ここまで実力を持っていたことは知らなかった。早押しの凄みは目立たないが、確実に正解を重ねる知識量は半端なものではなかった。駒澤大自体も宮澤君以外にも弥生杯などでそこそこ活躍し始めているので、安心して卒業できるだろう。
 3位は舛舘さん。PART1はトップで通過したこともあり、有利な位置からのスタートだったが、どうも早押しでは誤答が多く、早押し正解数は最下位。決勝進出者の中では唯一の社会人で、白夜書房に勤めているからKITANに最も近いプレイヤーとも言えたのだが、あまり関係なかったようだった。
 4位は私。各ラウンドを綱渡りで勝ち抜けてきたものの、ここではやっぱり無駄な誤答の多さが敗因だった。もっと確かな知識を増やさねばという気を起こさせた。

 以上で花と蛇杯EASTの体験記を終わります。


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